みそが胃がんの発生率を低下させる

みそを食べたラットには腫瘍が発生しにくい

広島は、太平洋戦争末期に原爆を投下され、その後、いわゆる原爆症で亡くなった人が少なくありませんでした。ところが、中には被爆したのに原爆症の症状が出ず、長生きをした人もいました。この人たちが日常的にとっていた食べ物がみそでした。

私は、このみその効能に興味を覚え、さまざまな実験を行ってきました。その過程で、みそが胃がんの発生率を抑えるらしいことがわかってきたのです。

強力な発がん物質を加えたえさに、それぞれみそ、食塩、普通のえさを合わせてラットに食べさせた結果です。

腫瘍の発生率は食塩えさの73・7%、普通のえさの68.4%に対して、みそえさを与えたグループでは57.9%。しかも、1匹のラットあたりの腫瘍の数も、いちばん少なかったのです。胃部腫瘍に限れば、みそえさグループの発生率はさらに低く、42.1%という結果になりました。

大豆自体ではなく、みそに効果が

みその原料は大豆です。大豆もさまざまな健康効果がうたわれますから、腫瘍発生を抑制しているのが大豆の成分なのか、みその成分なのかが問われるところです。

そこで今度は、みそをその仕込み時期から初期、中期、完熟期に分けて、右と同様の実験を行いました。その結果、完熟期のみその成績が最もよかったことから、大豆ではなく、大豆発酵食品としてのみそに効果があることがわかりました。胃がん予防には完熟みそが効果的。「熟成」「完熟仕込み」などと表示されたみそを選ぶとよいでしょう。

また、おもしろいことに、普通のみそでも減塩みそでも、腫瘍の発生率は同じ。つまり、血圧や動脈硬化対策としてはともかく、胃がんの発生に関する限り、減塩みそにする必要はないということも明らかになりました。

こうじ菌や酵母菌が発がん物質を無毒化する?

みそのどの成分が、どのようなメカニズムで発がんを防いでいるのか。これは現在、研究中です。こうし菌や酵母菌が発がん物質を無毒化するという説もあります。そもそも発酵という過程には、どうもまだよく知られていないパワーがあるようです。

みそは6世紀に日本に伝わったとされ、以来1500年の長きにわたって日本人に愛されてきました。昔の人は、体験的にみそが体にいいことを知っていたのかもしれません。1日1杯のみそ汁で、ぜひ、胃がんのリスクを減らしましょう。季節の野菜などを入れた具だくさんのみそ汁にすれば、栄誉バランスのとれたりっぱな一品になります。

なお、最近、みその食塩は血圧を上げないことが判明していますが、塩分による高血圧が心配な人は、カリウムをたっぷり含むわかめをみそ汁の実にとり入れたらよいと思います。 

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